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怪談:天からの贈り物

空気の澄んだキャンプ場に昼前に到着した。
あいにく空は曇ってはいるが、都会の猛暑から逃れられたという思いで気分は開放的になっていた。

ここはキャンプ場といっても公営でも私営でもなく、施設らしきものは何もない。水回りもないからあらかじめ飲料水などは買い込んでおく必要がある。
命綱となるコンビニも、ここから4~5キロ離れた場所にあった。
川の水なんて飲めたもんじゃない。というのも、トイレすら存在しないので、基本「自然に返そう」が暗黙の了解となっている地域だったからだ。
当然、不便極まりないのだが、無になれそうな気がする場所であることには違いない。そういう点が気に入ってこの場所を選んだのだった。

仲間は既にテントを組み立て始めている。さて、俺も、、と思ったらケータイ電話が鳴り始めた。
山間に響き渡る場違いの着うた「サザエさん」は、表示をみるまでもなく、お袋からの電話だった。

テントを組み立てている連中は、こんなとこまで電波が届くんだな、とからかっている。

「もしもし・・・」
「良かった。あんた、無事?」
「無事だけど、何?」
「今しがた、あんた宛ての妙なハガキが届いてね。『今日の昼12時から。悔い改めよ』って書いてあるから。何だか気味悪くなっちゃって。」
「なんだ、それ?誰から?」

案の定、差出人は不明。ハガキは至ってシンプルな文字で書かれているらしい。
腕時計をみると、ちょうど12時を回ったところだった。

「無事ならいいんだけど、無茶しないでよ。」

味の無くなったガムを吐き捨てて、もう電話すんじゃねーよ!と啖呵を切ろうと思った矢先、「え?え?なに?なに?・・・」というお袋のパニくった声が聞こえた。
「ちょ、ちょ、ちょ、掛け直すわ」と言って、ガチャンと電話を一方的に切られてしまった。

まったく、なんなんだよ!
取りだした煙草を口にくわえて、最後の1本だった事に気が付いた。ビール飲む前に買い出しに行かなきゃな、と考えていたら、また「サザエさん」が鳴り始めた。

「ケースケ!」
「こんどは何?」
「げ、玄関先になんだかグニャっとしたものがたくさん落ちているの・・・」
「は?なに?それ?」
「なんだろ、これ、、、」

「は?」
わけのわからない事をいってやがる!と吸っていた煙草を捨てて、怒鳴ってやろうかと思ったら、

「あつっ!あちっ、アチチ!!、、、ギャー!!!」
「ど、どうした!?」
「た、た、た、煙草が、煙草が降ってくるぅぅ~」

ギョッとなって捨てた煙草に視線を移した。捨てたはずの場所には煙草はなかった。もしや!?
「オカン、最初のグニョグニョしたのって、ガムじゃないか?」

「へ?ガム?そうかもしれないけど、もう煙がすごくて・・・近づけないわよ!」
咳き込みながらも、かろうじて言葉をしぼりだしている。

そういえば、

数日前の夜、路上でガムを吐き捨てた時に黒ずくめの老婆に何か言われた。災いがどうのこうのと言っていた。
相手にはしなかったのだが、こちらを見る目に寒気を感じたのは思い出した。

まさかなとは思いつつ、ためしにツバを吐いてみた。

「ひ、ひぇぇぇぇ!!!」電話口でお袋が悲鳴を上げている。
「なんか、今度はなんか水っぽいのが降ってきた!!!」

状況が飲み込めた。どうやら俺が何かを捨てると何倍にもなって家の玄関先に現れる様だ。
自分の考えをかいつまんで説明し、そんな子に育てた覚えはないよ!と泣き叫ぶお袋に「次が大事なトコだから、腰をぬかすんじゃねぇぞ」と言い放った。

俺は、老婆の冷たい視線を思い出しながら、「つめが甘いぜ!婆さんよ!」とニヤケながらポケットに突っこんでいた千円札を取り出し、ポイッと捨てた。

「なんかヒラヒラ降ってきたけど、、、ぎゃぁぁぁ」
「驚いたか!!」
「ばかっ!燃え始めた!家が、家が・・火が移った!!」

舞い降りた千円札は煙草に引火したらしく勢いよく燃えあがり、その炎は実家に燃え移ったらしい。
電話が切れたので、急いで掛け直したが繋がらない。

電話での会話が切れたとたん、静寂が広がった。
周りをみわたすと、仲間は食料の買い出しに行ったらしく、車が見当たらなかった。
ツイている。この秘密を知られないでいる方が都合が良かった。

しばらくすると、また「サザエさん」が鳴った。

「家、燃えちゃったよ。」

落ち込むお袋に対して、俺は余裕しゃくしゃくだった。ただ、ポケットにはもう金は残っていなかった。

「俺がなんとかするから心配すんなよ。」と心配する声色とは反して笑顔が広がったのだが、突如、俺は体の異変に気が付いた。

「やべぇ、オカン。そこからすぐに離れてくれ。」
「どうしたの、これ以上何がヤバいっていうのよ。」
「俺・・・腹下したみたいだ。」


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